老犬虚に吠えず

社会問題について考える場として

現実を模刻する物語・柴田勝家『アメリカン・ブッダ』

自分はいつも下記の別サイトで本の感想を書いているのですが、この柴田勝家氏の短編集『アメリカン・ブッダ』については、特に表題作が仏教をテーマにした作品という事もあるので、出張版でこちらに感想を載せたいと思います。本当は感想書きがメインで、こ…

開き直りと、捨て鉢で生きて行く人の辛さ

最近、身の回りで色々な事があって物を書いたり読んだりしている心のゆとりが無く、正直「生きてる感」があまりしないんですが、それでも書いておいた方がいいかなと思ったので書きます。 これから書く上で、自分の個人情報をあまり明かしたくないので個人名…

嘱託殺人・尊厳死・安楽死・優生思想が雑に語られる事について

www.yomiuri.co.jp この問題について書くつもりはありませんでした。 自分が語るべきなのかどうか悩む問題というのは常にあって、その中でも特に『自分が結論に至っていない問題に口を挟む事』にはためらいがあります。ただ、先日の嘱託殺人の件からこれらの…

『人種的に正しい表現』だけでは受け止めきれない『祈り』のために

作家の浅井ラボ氏がこんな事を呟いていらっしゃいました。 記事にあるように「アラブ系のキリストの姿もあって、それは最も本物に近い」だけど、歴史的正確さに従うことが広がっていった結果、自分と違う人種の宗教的シンボルへ向けられる信仰はどうなるのだ…

『本当だったら~出来ていたかもしれない』という呪い

いつもの記事と違って、とりとめがない事をそのまま出力したくなったので適当に書いて行く。ひとりごとに近いかな。 同級生の友人が車を買った。正確には昨年の1月に契約して、何と1年待ってようやく今年の1月中旬に納車されたらしい。スズキのジムニー(JB6…

原始仏教から『心理的ソーシャルディスタンス』を考える

ここ最近、カルト関係、仏教関係の記事が続いているのですが、今回もその流れで書きます。予想以上に反響があり、今はこういった信教の問題や、また宗教以外にもカルト的な抑圧にさらされる環境(ブラック企業とか)に悩んでいる方が多いのかなと思います。…

瓜生崇『なぜ人はカルトに惹かれるのか』を読む

この本、待っていました。 先日、こんな記事を書いたのですが、なぜ書いたのかというと、「本著を読む前に一度自分の中のカルト観を整理しておいて、読後にもう一度考えてみよう」と思ったからでもあります。 kuroinu2501.hatenablog.com 著者の瓜生崇氏は、…

なぜ自分達はカルトを信じてしまうのかという話

何だか『安倍昭恵氏がカルト的な思想に傾倒しているらしい』という内容の記事を見掛けてしまい、暗澹たる気持ちになりました。マジかーっていう。そして「これ本当かな?」と疑う一方で「まあ、可能性はあるな」と思う自分もいます。詳しくは以下の記事を参…

コロナ対策の給付金10万円を辞退せよ、寄付せよという主張の気持ち悪さ

はい、今週の激怒案件です。昼間、こんな事を呟きました。 コロナ関連で、国からの一律10万円の給付金について「公務員や議員等、所得減が無い人が受け取るのはおかしい」という話になっている様ですが、下記総務省HPを参照して下さい。目的は『家計への支援…

新型コロナウイルスの感染速度に関する記録・福島県 須賀川市の場合

先日こんな記事を書きました。 kuroinu2501.hatenablog.com 結論から先に書きます。 これを読んでいる方の住む市区町村で新型コロナウイルス感染者が出た場合、自分自身がウイルス感染の危険に晒されるまでの感染経路には、4人も濃厚接触者がいれば十分だと…

新型コロナウイルス感染者へのバッシングがなぜ悪いのか・福島県の場合

先日Twitterでこんな事を呟きました。 福島県から。4/2に発表された県内8例目のコロナウイルス感染について、感染者の10代女性へのバッシングが酷いので書きます。女性は3月末に2泊3日で東京に滞在しており、この時に感染したものと思われています。その行動…

れいわ新選組参議院議員・舩後靖彦様、木村英子様へ 障がい者支援施設職員からの手紙

最初は意見書の様な形で凄く硬い文章を書いたんですが、やはり直接両議員の事務所や党本部に文章を送る事はためらわれたので、手紙の様な文章に書き直してここに上げる事にしました。公式な申し入れの様な形にしてしまうと、自分の所属が特定されてしまった…

『神仏分離を問い直す』を読んで自分を問い直す

ちょっと前にTwitterで呟きましたが、法藏館の『神仏分離を問い直す』を読んでいます。 自分は大学で仏教を学んでいたので、Twitter経由でこの本を知った時には「これだ!」と思って小躍りしたのですが、そもそも大多数の人にとっては『神仏分離って何よ』と…

漫画版『戦争は女の顔をしていない』だからこそ届く読者がいることを思う

小梅けいと氏の漫画版が話題になった事で、原作であり、取材に基づく実話であるスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏の『戦争は女の顔をしていない』の事を知りました。それだけでもこの漫画版について自分は感謝したいのですが、こうした『戦争』を描く作…

『美空ひばりさんのAI』が歌い続ける未来像は、宗教の本質である

何か『美空ひばりさんのAI』の話題が流れてくるのを見てて思ったんですが、大学で仏教を学んだ人間からすると、これって宗教の一側面の様な気もして考えさせられるんですよね。自分の誤読かもしれないけれど。— 黒犬 (@kuroinu_2501) 2020年1月2日 昼間にこ…

『フルメタル・パニック!』『コップクラフト』が好きなあなたへ・そして賀東招二氏が嫌いなあなたへ

『フルメタル・パニック!』『コップクラフト』等の作品で知られる作家、賀東招二氏が、地球温暖化対策を求める環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏に対して批判的な(というより単に感情的に『嫌いだ』という内容の)ツイートをして炎上しました。 批判を浴…

織田信成氏のモラハラ訴訟が叩かれる理由

news.yahoo.co.jp これ、男性として嫌なニュースだったので短いですが言及します。 なぜ嫌なニュースだったかと言えば、マスコミはこれまで織田さんが『男らしくない』事を面白がって番組に起用していたのに、今度は同じ理由でバッシングに近い質問の投げか…

『DEATH STRANDING(デスストランディング)』と『ゲーム実況』から社会を見直す

皆さん『DEATH STRANDING(デスストランディング)』(以下デススト)やってますか? 自分は現実の仕事とゲーム上の北米大陸を往復する日々です。(未クリア) 国道建設にハマっているのですが、どこまで引いたとか言うとネタバレかもしれないので自重します…

フェミニズムと表現の問題を再考する② 『排除』から『交雑』へ

kuroinu2501.hatenablog.com 前回はここまで。最初に書いておくと今回は凄く長いです。 今回は、前回の最後で書いた様に、神林長平氏の小説『先をゆくもの達』をテキスト代わりに、フェミニズムとジェンダー、そして表現について考える。 自分はフェミニズム…

フェミニズムと表現の問題を再考する① 『細部』から『俯瞰』へ

先日、『宇崎ちゃん献血ポスター問題』について、こんな事を書いた。 kuroinu2501.hatenablog.com その時からしばらく経ったけれど、その後どうなったかと言えば、今度は『女性は少年漫画雑誌の編集者になれないのか?』という問題が取り上げられ、今も議論…

『日本人のための芸術祭』という愚行

こういう人達が出るだろうと思ってはいた。仕事終わったら言及しよう。日本人のための芸術祭で表現の自由論争再燃「嫌韓かるた」など議論に #ldnews https://t.co/p3Wx2oT5qn— 黒犬 (@kuroinu_2501) 2019年10月28日 上に貼った様に、職場の休み時間にネット…

『宇崎ちゃんは遊びたい』の献血ポスターに対する批判は、性的表現や表現の自由の問題ではない

この問題、何だかネット上で深夜まで議論されていて、SNSでも流れて来るので関心の高さが伺えるのだけれど、個人的には「男性である自分が何かしら言及する事って凄く難しい問題」だと感じている。 でも何か、『あいちトリエンナーレ2019』『表現の不自由展…

台風19号による被災と、過剰な自己責任論に対する怒り

いつもなら、「です・ます」調か、「だ・である」調で文章を書いている。でも、今回自分は結構怒っているので、おそらく乱れた文章を書くだろう。不快に思われる方もいるかもしれないから、先にその旨お断りしておく。 自分は福島県にある社会福祉法人で働い…

百田尚樹氏の著作を『ヨイショしろ』と言われたので無視して本気で感想を書く。

新潮社のキャンペーンが炎上した。 百田尚樹氏の新作を『ヨイショする感想』を書いて応募する事。作者を『気持ちよくさせた人』20名に1万円分の図書カードを進呈する事。この内容が「お金でレビューを買う行為」「品がない」「『ヨイショする』という事はお…

『あいちトリエンナーレ2019』『表現の不自由展・その後』に関する諸問題③ 対話なき規制という不毛

前回まではこんな流れだった。 kuroinu2501.hatenablog.com kuroinu2501.hatenablog.com さて、ここからが本番。 自分の中でも「これが正解」と思える答えは得られていない。 『表現の自由』について論じる時、そこには必ず「他者を不快にさせたり傷付けたり…

『あいちトリエンナーレ2019』『表現の不自由展・その後』に関する諸問題② 廃仏毀釈とバーミヤン渓谷の石仏破壊から考える

前回はこちら。 kuroinu2501.hatenablog.com 前回の最後で、「『表現の自由』と言っておけば何もかも許されるのか」という問題に入って行くと予告した訳だが、その前に過去の歴史を今一度振り返ってみたい。 政府が特定の価値観を是とし、これに反するものを…

『あいちトリエンナーレ2019』『表現の不自由展・その後』に関する諸問題① 表現の自由と検閲

『あいちトリエンナーレ2019』における『表現の不自由展・その後』に関する諸問題については、当初から自分も言及したい事が色々とあった。ただ、自分の中で結論が出ていない部分もあって躊躇していたのだが、その間に文化庁が『あいちトリエンナーレ2019』…

小泉進次郎氏が大臣に不適格である理由② 原子力防災担当大臣として

自分は前回、『小泉進次郎環境大臣は、与党内の反対派と戦えないが故に環境大臣として不的確なのではないか』という趣旨の記事を書いた。 kuroinu2501.hatenablog.com 前述したのは小泉大臣個人の資質というか、覚悟の程に関する部分だった訳だが、後半とし…

小泉進次郎氏が大臣に不適格である理由① 環境大臣として

自分は福島県在住で、今日は小泉大臣が来るというニュースを見て出勤した。彼が来ても来なくても、自分の暮らしは変わらない。今日も働くし、明日も働く。小泉大臣に会いに行く事は出来ないので、こうして思う所を書く。 最初に断っておくと、自分は小泉進次…

過剰な自己責任論が日本に蔓延する理由

今の日本では、自己責任論が過剰に唱えられている様に思う。 例えば生活保護受給者に対する批判は、本来裕福なのに所得を隠して不正受給する様な「批判されて当然」という様なものから、次第に「不正受給者でもない者をまとめて批判する」という様に、批判の…