老犬虚に吠えず

社会問題について考える場として

コロナ対策の給付金10万円を辞退せよ、寄付せよという主張の気持ち悪さ

 はい、今週の激怒案件です。昼間、こんな事を呟きました。

 

 

 公務員や国会議員、その他今回のコロナウイルス騒動の中で『所得が下がっていない人』については、給付金を辞退せよ、あるいは受給した上で寄付せよという主張が聞こえる様になりました。著名人や広島県知事等が好き勝手な主張をしている様ですが、(広島県知事については発言を撤回された様ですが)自分の激怒ポイントはここです。

 

 『年金受給者、生活保護受給者も給付金を辞退すべきだ』という乱暴な主張がまかり通っている事。

 

 昼間はまだ仕事中の休み時間だったので、なるべく丁寧な口調で(しかしちょっと皮肉っぽく)ツイートしましたが、「これもっとちゃんと怒りを表明しないと伝わらないな」と思ったので、以下、語気を強めてちゃんと怒ります。

 

 まず『所得が減少した人だけが給付金を受け取るべき』という主張は、本来の給付金の趣旨から外れた主張なので、総務省の資料を熟読してから出直して下さい。(以下PDFです)

 

『特別定額給付金(仮称)事業の実施について』総務省資料)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000684015.pdf

 

この中の『1 施策の目的』の欄にこうあります。

新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言の下、生活の維持に必要な場合を除き、外出を自粛し、人と人との接触を最大限削減する必要がある。医療現場をはじめとして全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ちを持ち、人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならない。」と示され、このため、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う。

 

 「人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならない」という部分はどうでもいいので脇に置きます。大事なのは『家計への支援を行う』という部分です。

 つまり、今回の定額給付金目的は『所得減少に対する補償』ではなく『家計支援』だという事です。

 

 常識的に考えて『給与所得が減っていなくても家計負担が増える』事はありますし、実際そうなっています。

 

 例えば学校が休校すれば、外出や外食も控えて欲しいと要請されている以上、お子さんの食事をそれぞれのご家庭で毎食用意しなければならないですし、リモートワークに切り替えている人は光熱水費の負担が増えている筈です。(それは経費として請求する事ができないでしょうし)マスクも高騰してコロナ禍発生以前の10倍以上の定価で取引されていますし、それでも自費でマスクを買わなければならない職種の人はいます。

 

 そもそも所得が減っていないという事は、『職種的に休めない為に働き続けている』という事でもあって、そうした方々を軽視していいのか、という問題もあります。

 

 これらは、自分ですらぱっと気付く事です。国会議員や地方自治体の首長が気付かない訳がありませんし、知らないとは言わせません。それを知らぬふりで「所得が減少していないなら給付金を辞退せよ、寄付せよ」と迫るのは、こうした事情を知っていて無視しているとしか思えません。

 

 繰り返しますが、家計を支援する事がこの給付金の目的です。公務員だろうが、国会議員だろうが、年金受給者だろうが、生活保護受給者だろうがそれぞれ家計負担はしています。だったら給付金を受け取る事に何か特別な理由が必要ですか?

 

 そして個人的には、他人に使い道を指定されるのも同様に間違っていると思います。

 「貯蓄に回すな」という主張が多いかと思いますが、家計の状態によっては「もっとまずい事態になる事を想定して、今は使えない」という方もいるでしょう。だったら今は貯蓄したって良いと思いますよ。「経済を回せ」と言う人は財界人だったりする訳で、余裕のある人が無理のない範囲で経済に貢献して下さい。庶民には庶民の暮らしがあるので。

 

 ここまで読んで、それでもまだ『いや、所得が減少していない人に給付金が渡るのはどうしても許せない』という方がいたら、あなたがすべきは『給付金をもらう人を叩く』事ではなく、『所得減少の補償ではなく家計支援というバラマキを決めた内閣府総務省を叩く事』です。

 

  今からでも給付目的と給付対象を見直せと、内閣府に言って下さい。総務省でもいいです。それなら自分も納得します。それをしないで受給者を批判するのはお門違いです。強い者には従順で、弱い立場の人にばかり勝手な事を言うのはどうかと思います。人として。

 

 そして、これらの理不尽な主張をしている人達が、しれっと『年金受給者、生活保護受給者も給付金を辞退すべきだ(だって年金や生活保護は減らないから)』という謎の(そして頭の悪い)主張をして来るので腹が立つのですが、ほぼ全ての家庭で家計負担が増大している現状、一番ゆとりがないのが年金受給者と生活保護受給者である事は明白です。まあ子どもでも分かる事だと思いますが。

 

 その一番弱い立場の人達を給付対象から除外しようとする事に正当な理由が存在するとは到底思えません。何なら自分が普段働いている社会福祉法人の入所施設には障害基礎年金の受給者がいますが、彼等だって同じ事です。そして社会や一部の世論がどんなに横暴であっても、彼等は自分で怒りを表明する事が難しいですから、代わりに自分が怒る事にしました。ふざけんなよと。怒っている人間がここにいるという事を言っておかないと、当然の如く無視されるでしょうから。

 

 そして現状既に無視されてしまっている人々がいます。給付金の請求方法が書類の郵送などによる世帯主の手続きで、自治体から世帯主の口座に振込する事が検討されている様ですが、今般の営業自粛騒ぎで明らかになった多くのネットカフェ難民や、住所不定の方々は一体どうやって給付を受けるのでしょうか? またDV被害からシェルターに避難している様な方々はどうしますか?

 本番までに対策を考えてもらいたいです。宿題として。まさか給付できないという事にならない様に。

 

 繰り返しになりますが、公務員や年金受給者、生活保護受給者に給付金が渡るのがどうしても許せないという方々の為にもう一度書きます。彼等が給付金を受け取る事が絶対に許せないと思うなら、あなたの敵は内閣府です。もしくは総務省ですね。決して弱い人々を選んで叩こうとしない様に。自分はその事について怒っているのです。