老犬虚に吠えず

社会問題について考える場として

カルトと陰謀論『情報に溺れる人々』について

<日常と混じり合うカルト・陰謀論> 以前、『なぜ人はカルトに惹かれるのか』という本の感想を書いた事がある。 kuroinu2501.hatenablog.com 自分は大学時代に仏教学に触れた。その進路選択には一連の『オウム真理教事件』が影響していたと思う。 『なぜ人…

その言葉の向こう側にいる、あなたへ・長谷敏司『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』を読む

本を読む事を諦め始めて、少し経った。 「読書なんて娯楽なのだから気負わなくていい。義務でするものじゃない」 そう言われれば、それはその通りで。でも『その通りになってしまう事』をどこかで拒絶している頑なな部分が、自分の中にはある。 本を読む。小…

『信教の自由』が守られるという事は・菊池真理子『「神様」のいる家で育ちました 〜宗教2世な私たち〜』を読む

多分、日本人の多くは『信教の自由』というものをあまり意識せずに暮らしている。 信仰とは親から引き継ぐものであって、それは「どこかの寺の檀家である」とか「先祖代々の墓がどこにあるか」とか「葬儀を頼むのはどこか」といった事柄以上の意味を持たない…

カルトがはびこる今だからこそ・奥田知志『ユダよ、帰れ』を読む

今この時に、本著に触れる事ができて良かったと思います。 カルトがはびこり、宗教全体が社会から疎まれかねない中で、人々の生きる助けとなるために聖書の言葉を読み解いて行くという姿勢が貫かれている本著は、キリスト教の説教集という枠を越えて多くの人…

同じ色の血が流れているからこそ・小泉悠『ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔』を読む

ウクライナで戦争が始まってから3ヶ月が経過した。戦争と言っても、ロシアのプーチン大統領はこれを戦争だとは認めていない。その異様な『特別軍事作戦』は、これを書いている2022年6月1日現在もまだ続いている。 ロシアに対するイメージは、このウクライナ…

他ならぬ自分自身に向けられた刃として・平井美帆『ソ連兵へ差し出された娘たち』を読む

『ソ連兵へ差し出された娘たち』という言葉が持つ重み。それは自分の胸を強く叩く。そして自分もまた加害者なのではないかという疑念を強く抱かせる。 このドキュメンタリーは言ってみれば『告発』なのだと思う。平井氏の取材に応じた当事者の方々はあくまで…

『シン・ウルトラマン』に寄せて (※ネタバレあります)

『シン・ウルトラマン』について。 ネタバレだらけなので未見の方は読んじゃダメですよ。 来ちゃった。これから観賞します。 pic.twitter.com/27jdocRzJb— 黒犬 (@kuroinu_2501) 2022年5月20日 『シン・ウルトラマン』観てきたよ記念その2。スペシウム光線『…

キャンセルカルチャーの危うさを考える・その『正しさ』はいつまで正しいのか

前回からの続きとして。 kuroinu2501.hatenablog.com 自分がいわゆる『キャンセルカルチャー』つまり特定の人物や思想、価値観を『排除』して行く事によって『より良い社会』が作れるだろうという考え方を受け入れ難いのは、その何かを排除して行く、或いは…

キャンセルカルチャー=排除はより良い社会を作れるか

『情況2022年 4月号』を興味があって、読んでみた。特集はキャンセルカルチャーについて。この問題について釈然としないものを感じている人、感じた事のある人は読んでみると良いかもしれない。 キャンセルカルチャーという言葉について考えてみる時に、まあ…

ウクライナ侵攻でさえ『感動ポルノ』にする自分達の『卑しさ』

貴方は、2日で100kmを歩いた事があるだろうか? 自分はある。20年以上前、自分が高校生くらいの時だった。 なぜ? とか、何のために? といった理由は無い。しいて言えば、当時の自分はボーイスカウトで、その活動の一環だったというだけだ。ボーイスカウト…

批評すること、論じること、そして背中を押すこと・『ライトノベルの新潮流』を読む

唐突ですが、実は自分は『ライトノベルを読む人』だったのです。昔は。 なぜ『昔は』と言わなければならないかというと、今はそれほど読めていないんですよね。決して「ライトノベルが嫌いになった」とか「最近のライトノベルは面白くない! 自分が若い頃は…

物語に向き合えなくなった、ある本読みの話

物語に向き合う力が、無くなったのだと思います。 ひとつの物語を、その始まりから終わりまで追い続けるという事が出来なくなりました。それはライトノベルや漫画で言えば、1巻から最終巻まで読み続ける事ができなくなったという事だし、アニメやドラマなら…

東京オリンピックとスケボーと『価値あるものだけが欲しい』社会

久し振りに何か書こうと思いまして。ちなみに『正解』らしきものは自分でもまだ見えていませんので、これから先に書く事はあくまでも自分の『意見』だと思って下さい。 さて、東京オリンピック・パラリンピックも終わりましたね。『無事』終わったかどうかは…

小山田圭吾氏の『障がい者いじめ』問題と、これからの障がい者の自立支援について

kuroinu2501.hatenablog.com 先日、こんな記事を書いたばかりですが、今度は東京オリンピックの開会式に作曲担当として参加しているミュージシャンの小山田圭吾氏が、過去に雑誌のインタビューで『障がい者をいじめていた』事を告白していた事が報じられ、そ…

『HINOMARU』の野田洋次郎と『MOTHER』の長渕剛

何だかRADWIMPSのボーカルの野田洋次郎さんが炎上しているらしくて。 自分は『君の名は。』や『天気の子』といった映画からRADWIMPSの曲を聴き始めた様な奴なので、ちゃんとしたファンを名乗るつもりはあまりないのだけれど、それでも「ちょっとその批判のや…

あなたも『執着』を捨てて強キャラになろう! 『当たり判定』と仏教

SNS上でも実際のやりとりでも思う事なんですが、最近『当たり判定』が大きい人が増えたなって感じるんです。いきなり何の話かって言うと、また最終的には仏教の話になるんですけど。 これだけだと「こいつまた何かおかしな事を言い始めたぞ」っていう感じな…

障がい者支援施設職員の目線から『「利他」とは何か』を読む

本著『「利他」とは何か』は、5人の著者による共著であり、彼等がそれぞれの研究分野や専門性を活かして『利他』という行為・概念を紐解いて行こうという本になっています。 自分は仏教学部で学んだので、『利他』という言葉をどこか仏教用語の様に受け止め…

僕らの「信仰」の物語として ルース・ベネディクト『レイシズム』を読む

まずは『レイシズム(racism)』という言葉から。この言葉は、最近になってまた日本でもよく見聞きされる様になったと思う。その語源は英語であれば『人種(race)+主義(ism)』であり、そのまま『人種主義』と訳される。 日本大百科全書による人種主義の…

東京オリンピックから遠く離れて

昨日、父が再入院した。 入院は以前から分かっている病気の治療の為で、2週間程度で退院できる見込みだから、本人も家族も慌ててはいない。 でも面会はできないし、病棟には入院患者しか入れない。コロナ禍だからだ。 自分は病院の入口の前で、車から降りず…

伊是名夏子氏を『モンスタークレーマー』だとする今の日本で、『蛇の尾』として生きるという事

最初に書いておくと、自分は福島県民で、現在は社会福祉法人で障がい者福祉の仕事に携わっています。対象は重度の知的障がい者です。障がい支援区分で言うと、区分5から区分6の方々です。ちなみにこの区分は6が最高です。 なぜ最初にこれを書くかというと、…

『須賀川特撮アーカイブセンター』に見る、地域振興における文化財の活用について

随分と硬い題名で始まりましたが、要するに『地元民がようやく特撮アーカイブセンター行ったよ』という話です。ですが、それだけだと味気ないので、これまでの地域振興における須賀川市の『やらかし』的な話とも絡めて行きたいと思います。 『須賀川特撮アー…

選ばれなかった僕等と選ばれた彼等を結ぶ様に『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(ネタバレあり)

まあ、こんな辺境のブログに辿り着く様な方はもう劇場版を観て来た人だと思うのだけれど、それでも一応「ここから先はシン・エヴァンゲリオン劇場版のネタバレ前提で話を進めますよ」と警告しておく。未見の方はこの文章を読んでいる暇があったら劇場に行っ…

森会長の辞任から見えて来る自分達のダメさ加減

ここ数日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に関連するニュースを見ていて、年が明けても酷い話題が続くなと思っていました。それで、この男女差別を男性である自分の目線から見て何か書くべきかと思っていた…

落ちぶれた僕らにとって『おぼっちゃまくん』はなぜ笑えない漫画になったか

景気の悪い話は年内で終わらせて、来年は少しでも希望が持てると良いなと思ったのでこんな「書いてる自分ですら読みたくない様な記事」を書いているんですが、その中で「小林よしのり氏は『コロナ論』を描くくらいなら『おぼっちゃまくん』の続きでも描いて…

コロナ対策『経済優先か感染対策か』という二択に対する違和感

『コロナなんて大した事はない』という戯言を聞く度に思いますが、自分達の様な福祉・介護職員は訴えられる事まで覚悟して仕事・生活をしています。精神的にも日々消耗しながら。寝言も大概にして下さい。三次の介護業者を提訴 「ヘルパーから感染」、82歳…

cakesのホームレス記事は何が間違っているのか②

kuroinu2501.hatenablog.com 前回の記事で、『なぜ自分達の人権意識は低いままなのか』という問題についての回答を宿題にしていました。今回はそれについて書きます。 前回自分はその理由を『日本の教育の失敗』だと書きました。そして『失敗というよりも、…

cakesのホームレス記事は何が間違っているのか①

元記事を拡散したくないのでリンクは貼りません。 最初に注意点を書きます。 自分は普段、誰かの意見を『間違っている』とはっきり言い切るのはなるべく避ける様にしています。相手の意見にも正しい側面はあるし、自分の意見が間違っている事もあるからです…

40代のおっさんが創作BL小説を書いたら人生観が変わった話をする

10月は1回もブログを更新しなかったんですが、ここを放置して何をやってたかというと、小説書いてました。まあアマチュアなので長編でもないし「これから公募新人賞に出すぞ」とか「自分もいつかプロ作家になってやるんだ」みたいな夢を抱いている訳ではない…

人の罪の島で生きるという事・根本聡一郎『人財島』

自分が『人材』ではなく『人財』という言葉を初めて聴いたのは、確か7、8年前だったと思う。 当時は運送会社で事務をしていた。その時の上司であり経営者一族でもある専務は、どこかで聞きかじって来たらしい『人財』という言葉を、さも自分が思い付いたかの…

今、自分達の過ちに気付く為に・森下直貴 佐野誠 編著『新版「生きるに値しない命」とは誰のことか ナチス安楽死思想の原典からの考察』

近年、『生きるに値しない命』という趣旨の言葉を聞く事が増えた気がしています。例えばそれは相模原障害者施設殺傷事件の植松聖死刑囚が言う『心失者』という造語が指し示す人々の事でもあるし、自民党衆議院議員の杉田水脈氏が言う『生産性がない』人々の…